At Home works

赤ちゃんがやってきた

2013年に第一子を妊娠してから、母親としての自分の身体や心境、家族のあり方など、様々な変化に寄り添う日々を綴る林彩子のコラム

その40 0歳2ヶ月 

小さい人に、
沢山の経験をさせたいと思うのは、
親心だろう。
そして
そのおかげで自分も沢山のことを経験できる。
子育ては情緒を育ててくれる。

鎌倉大町祇園祭り
一歳未満の子が神輿の下をくぐると無病息災のお祈りになると
近所の酒屋、石川さんに教えて貰って
楽しみにしていたこの日。

神様と、白装束の担ぎ手さんに
祝福され、お守りも頂く。
健やかであるように。

写真 2014-07-12 15 25 02 (1)

その39 0歳2ヶ月 

自分が子供っぽい、欲求に忠実な人間でよかったなあと思う。

じーっとじーっと観察すると
赤ちゃんは常に何かを訴えている。
心地よい状況では文句は言わない。
要するに、大人も子供も皆同じってこと。

お腹が空いたよ
オムツが気持ち悪いよ
眠いー
眠いけど上手く寝られないー
暑い
寒い
この、ここんとこ、胸のへんのここが濡れてて気持ちわるい!
さーみーしーいー

じっと観察する。
自分だったら何が嫌かを考える。
だんだん
何を求めているかがわかるようになる。
いや、何を求めているかを探っていく。
それでそれがきちんと叶うと
ふわあっ
て笑ったりする。

そうそれ。あたり!

そんな感じ。

それはゲームを攻略したような
充実感

なんとかかんとか
格好つけたこと言っていても
昨日わかったことが
今日はわからない!
試行錯誤なそんな日々

パパと

その38 0歳2ヶ月 

小学生の頃、
家に帰るといつも
手作りのおやつが待っていてくれた。
甘くていい匂い
不恰好だけど、
とても美味しかったなあ。

花紅さんを母が愛おしげに抱っこしているのを
父が微笑みながら覗き込んで
二人で笑いあってるのをみたら
自分もこうして育ててもらったんだなあと、思う。

それはまるで既視感

こうやって、愛しい愛しいと
育てられて今があるんだ。

実家で
母が作ってくれた、
不恰好だけど甘くて
幸せの味がするドーナツを食べながら。

写真 2014-06-30 16 04 13

その37 0歳2ヶ月 

毎年、結婚記念月に家族写真を撮っている
義兄姉夫婦。

今年は花紅ちゃんが生まれたから
一緒に撮ろうと言ってくれて
二人の9回目の結婚記念日に
皆で写真を撮った。

家族が一人増え、二人増え、
忙しい中で
そうやって必ず記録を残すのは
簡単なようでなかなか出来ないこと。

家族を大切にする
子供たちを愛する

当たり前で、
とても大事なことを
身近でいつも教えてくれる。

写真 2014-06-21 10 13 17

その36 0歳2ヶ月 

徒歩7分の気安さで
夕方の海をお散歩してみる

この人は日々をどんどん吸収しているのだろう。
自分にとっての二ヶ月なんて
何もしてなくても代わり映えもなく
過ぎて行くものなのに。

海の匂い、祭囃子、
道路の振動、笑い声、
春から夏に変わる気配

脳細胞がサイダーみたいに
弾ける音が聴こえるようだ。

ファイル 2015-04-09 0 02 30

その35 0歳1ヶ月 

海が赤い日は夜光虫がでるんだって、
夜になったら光る海をみに行こう と、
とまそんが言って
帰ってきたみっこさんを誘うつもりで
駅まで迎えにいった。
ところがお能鑑賞の帰りでなんとお着物。
あーどうしよっか
と迷う私たちにもちろん行くわよ!
と母は息巻く。

海に入って、ザバーっと蹴ると、
銀のブーツみたいになるからやってごらん

今にもお着物をたくし上げて入りそうな勢いで
母がいう。

0歳の花紅さんと
70歳のみっこさんと
光る海

夜光虫

その34 0歳1ヶ月 

朝陽のなかで
目を開けて静かにこちらをみていたりすると、
唐突に

貴い、

という感情に胸を突かれる

こんなにも貴いひとが
私たちのところに来てくださった。

急にいっぱいになって
涙がこぼれたりする。

仏陀やキリストのお母さんて
こんな気持ちだったのでは。
おこがましい感情とはいえ、
全ての母はみな静かな明け方の中で
こんな気持ちになる瞬間があるのでは、
とも思う。

(朝昼晩と区切りのない生活には
なかなか静かな明け方はこないのだけれど)

足長陽さん

その33 0歳0ヶ月 

産まれてからたったの
14日までに、出生届を出さなくてはならない。
それまでに名前も決定しなくては。

そりゃあ10月10日も考える時間があると
思うかもしれないけれど、
その人が一生連れ添う
大切な名前だ。

そして楽しみながら色々と考えて
候補をあげてあったとしても
生まれてそのお顔をみると
なんだか違う気もしてくるもの。

我が家の場合
ユパ様があまりに定着していたので
女の子なら
ゆぱ、は元より
ゆうは、ゆいは
などが候補にあった。
また、こはる や こすず などの
シンプルで古風な名前もいいねと言っていた。

しかし生まれてきたユパ様に会ってみると、
三日三晩かけ満月にむけて生まれてきたことや、
その悠然とした雰囲気に
どれもぴったりとこないような気がしてきて
一から決め直しとなった。

親が子供に名前をつけるというのは
思ったより責任重大なことで
なんどもなんども推敲した。

ずっと呼ばれるというのは
そのようになる、ということでもある。

どんな人になってほしい?
この人の雰囲気とあってる?
親のエゴではないか?
ひらがなでは、ローマ字では、
苗字との相性は?

この人が生まれてきた経緯を思う。

自然の理にのっとり
焦らず自分のペースで生まれてきた。
美しい季節に
あるがままの美しさをもって。

そこで禅語の
柳緑花紅
という言葉がふと、でてきた。

柳はみどり、花はくれない
あるがままの美しいさま
物事に自然の理の備わっているさま
そして、みんな違ってみんないい。

花紅

かこ

林 花紅 はやしかこ

出生届を提出する期限の前日に
家族皆が納得のいく、
彼女らしい名前を届け出た。

命名

その32 0歳0ヶ月 

まだ目は見えてないんだよね、
とか
この頃の笑いはただの筋肉の反応、
とかましてや
赤ちゃんは何もわかってない
とか。

こちらの勝手で決めつけることは
したくないなとおもう。

言葉が話せないから何も考えてない、
と思ってしまうのは
外国に行って言葉が話せない
もどかしさに似ている。
話の議題にひとことあっても
面白いことを思いついても
それを伝える手段がないと
まるで無知のようだ。

その小さな頭には
きっと叡智が詰まっている。

おしりふきを当てるとき
ちょっと冷たいですよ、
と声を掛けるとビクッとしないし
お風呂に入れるとき
少しあったかいですよ、といえば
信用して任せてくれる。

適うように、適うように
言葉をまだもたない小さな人の
意図を汲み取っていくような日々

写真 2014-07-04 19 27 26

その31 0歳0ヶ月 

おっぱい問題というものが
母業界には確実にある。
なかなか思うように出ない、
赤ちゃんが泣き止まない、
体重が増えない、
とにかく痛い、
乳腺炎になる、

子育てというのは時代によって
何がいいとか悪いとか
まるで流行りもののように変わる

今は完全母乳、
略して完母の全盛期らしい。
私は別に何が絶対なんてことはないと思っているので、
生まれてきた人次第でその辺は
臨機応変に、と思っていた。

母乳というのは
生まれてから三日間位は
ほとんど出ないらしい。
そして赤ちゃんはその間
なにも入らなくても大丈夫な位の
お弁当を用意している、という。

でも喉の渇きも空腹も、
全ておっぱいで賄うはずなのに
出ないとなるとやはり辛い。
だから、ものすごく、強く、吸う。
吸う方も初心者ならあげる方も初心者で
正直ものすごく痛い。

ふとみると
ヤるかヤられるかだ!
みたいな顔でガフガフいいながら吸い付いている。
ふと、指を吸わせてみたら、
歯茎のところでものすごい力でしごきつつ、
舌で吸引してる。
そりゃあ痛いわけだ。

しかも良く出来ていることに、
この出ないのに吸わせる行為で
刺激されてミルク製造機が回り始めるらしい。
更には、赤ちゃんが生まれて弛緩したままの子宮がまた小さくなるのを助けるという。
ただしこれがまた子宮が痛い。

吸われると切れていたい。
しかもお腹も痛くなる。
というのはかなりの苦行だと思う。

毎回おっぱいを差し出す時、
「風の谷のナウシカ」の
ナウシカとテトが初めて出会う、
あの名シーン

ほら、怖くない、怖くない

が頭をよぎる。
(映画を観たことない方は是非この機会に観て戴きたいです。私の永遠のベスト1です)

何度も切れてはカサブタになり、
吸われてふやけて切れてカサブタ
を1時間毎に繰り返した結果、
とうとう耐性ができてくる。

そして赤ちゃん自身も、
段々吸い方が上手くなってくるのだった。

鼻齧り

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登場人物
「私」

鎌倉在住の陶芸作家
初めての妊娠出産育児に新しい発見と面白みを見出す
家族とアシスタントさんに支えられながら育児と作陶を両立中 夫、義母、娘と四人暮らし


花紅(かこ)さん

2014年4月林家に誕生した女の子
心身共に健やかな人


ユパ様

腹の中にいたときの花紅さんの呼名


 
とまそん

夫 ミュージシャン
SheHerHerHersのベーシスト
鎌倉では「小川コータ&とまそん」としても活動中
嫁の仕事の影の立役者
哲学者のような深い洞察力で子育てを楽しむ


みっこさん

同居するお義母さん 野口整体指導者として毎日忙しく飛び回るが家ではキュートなお母さん兼、ばあば
「私」の憧れの女性


アシスタントさん

「私」のアトリエAt Home Worksに来てくれるアシスタントさん達
皆が積極的に子育てにも協力
アトリエではミルク、オムツ、寝かしつけ、作陶となんでもこなす。
チームAt Home Worksとして見事な連携プレーをみせる

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