At Home works

その13 8ヶ月

日々中の人を感じる母と違い、
父となる男性にとって
お腹の中にいる人に話しかけるというのは、
ある意味ぬいぐるみに話しかけるような
気恥ずかしさを感じるものだろうとおもう。

八ヶ月に入ると、
胎動は外から見ていてもわかるぐらいはっきりしてきて
まるでエイリアンが入っているかのように
グニグニ動き回るようになった。
以前のように微かなポコポコではなくて、
グリングリンやらボカンボカン、
というような胎動になり
声を掛けると反応するような気配もある。途端に
小さい人間が中にいるんだなあ、と実感できる様になる。

その辺りからとまそんは
ユパさまに話しかけることが多くなった。
いってきます、ただいま、
さらには自分の知っている話を聞かせる。
それは私にとっても豊かな時間で楽しみなひと時になる。
ユパさまも喜んでグリングリン動いているようだった。

あるとき、
じゃあ明日の夜もお話しようね、お休み、と言った翌夜
疲れて寝てしまいそうだったのをふと、
このまま寝てしまったら約束を破ることになるのでは、
と感じた。
短いお話でいいからしてほしい、とお願いして
とまそんがじゃあ寝る前に少しお話しようか、
とお腹に向かって言った時の反応は凄まじく、
それまで静かだったのにボコんボコんとノックしてきた。
二人で驚いて顔を見合わせ、

そうかやっぱり待っていたんだ約束したんだものね、と話しあった。

相手が大人でも子供でも、まだ生まれてきていない存在でも、
約束をしたなら果たさなければ。
その存在をみとめ、尊重しなくては。
見えないからいないのではなく、
きちんとこちらのことを見ているのだから。

それからとまそんは、より一層その存在を認めて、
話かけるのを躊躇わないようになった。


[ - 赤ちゃんがやってきた ]

登場人物
「私」

鎌倉在住の陶芸作家
初めての妊娠出産育児に新しい発見と面白みを見出す
家族とアシスタントさんに支えられながら育児と作陶を両立中 夫、義母、娘と四人暮らし


花紅(かこ)さん

2014年4月林家に誕生した女の子
心身共に健やかな人


ユパ様

腹の中にいたときの花紅さんの呼名


 
とまそん

夫 ミュージシャン
SheHerHerHersのベーシスト
鎌倉では「小川コータ&とまそん」としても活動中
嫁の仕事の影の立役者
哲学者のような深い洞察力で子育てを楽しむ


みっこさん

同居するお義母さん 野口整体指導者として毎日忙しく飛び回るが家ではキュートなお母さん兼、ばあば
「私」の憧れの女性


アシスタントさん

「私」のアトリエAt Home Worksに来てくれるアシスタントさん達
皆が積極的に子育てにも協力
アトリエではミルク、オムツ、寝かしつけ、作陶となんでもこなす。
チームAt Home Worksとして見事な連携プレーをみせる

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