At Home works

その30 0歳0ヶ月

生まれた病院は
母子同室の四人部屋だったので、
それぞれの赤ちゃんが交互に夜中でも泣く。
お互いさまなのに、
それでもお母さん達はまっさきに
シーッ
と赤ちゃんに声を掛ける。
周りはやっと寝かしつけたばかりだから
気を遣うのは当然とはいえ、
同じ状況だとわかっているのに
静かにさせなきゃ
と思うこの状況はなんだか切ないな、
と思っていた。

あまりに泣き止まないと、
寝ぼけ眼で授乳部屋に出て行ったりもした。
するとやはりギャン泣する赤ちゃんを
寝癖のお母さんがあやしていて、
お互いにトホホ顔で笑いあいながら
でも可愛いんですよねーと話して和んだりした。

2. 3時間で生まれようと
60時間掛かろうと
帝王切開でも自然分娩でも、
みなそれぞれ必死に生んで
一生懸命生まれたんだ。
命が精一杯の声で命を叫ぶのは
当然だろう。

そう思ってはいても、
まだ慣れない新米ママは
一時間おきに泣いている赤ちゃんに途方にくれる。

寝ている時は自分も寝るチャンスだから
おっぱいをあげている時に携帯で 
生まれました、の連絡をしていた。
赤ちゃんはなかなか泣き止まない。
どうしていいかわからず、
初めて一夜を明かした時はクタクタになっていた。

その日の面会時間にとまそんがきてくれて、
嬉しそうにユパ様を抱きしめる。
じっとただただ愛情をこめて
愛おしくて仕方ない、と抱きしめる。
するとあんなに泣いていたのが
安心した顔をして全く泣かない。

その姿をみて、
とてもとても反省した。

そうか、おっぱいをあげるから、
オムツをかえるから、
泣き止むんじゃないんだ。
あなたを愛してるって伝えることが
大切なんだ。
生まれてきた途端に勝手に戸惑って、
お腹にいた時のように話しかけることも忘れてた。

その夜から大切なコミュニケーションの最中であるおっぱいの時に
携帯を触ることを自分のなかで禁止した。
可愛いね、会えて嬉しいよ、
と伝えながらおっぱいをあげたら
途端に意思疎通がスムーズになり、
こちらもよく眠れるようになった。

生まれた日


[ - 赤ちゃんがやってきた ]

登場人物
「私」

鎌倉在住の陶芸作家
初めての妊娠出産育児に新しい発見と面白みを見出す
家族とアシスタントさんに支えられながら育児と作陶を両立中 夫、義母、娘と四人暮らし


花紅(かこ)さん

2014年4月林家に誕生した女の子
心身共に健やかな人


ユパ様

腹の中にいたときの花紅さんの呼名


 
とまそん

夫 ミュージシャン
SheHerHerHersのベーシスト
鎌倉では「小川コータ&とまそん」としても活動中
嫁の仕事の影の立役者
哲学者のような深い洞察力で子育てを楽しむ


みっこさん

同居するお義母さん 野口整体指導者として毎日忙しく飛び回るが家ではキュートなお母さん兼、ばあば
「私」の憧れの女性


アシスタントさん

「私」のアトリエAt Home Worksに来てくれるアシスタントさん達
皆が積極的に子育てにも協力
アトリエではミルク、オムツ、寝かしつけ、作陶となんでもこなす。
チームAt Home Worksとして見事な連携プレーをみせる

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