At Home works

赤ちゃんがやってきた 記事一覧

その10 6ヶ月 

産み方を選ぶ
そんな時代になったのはいつからなんだろう。

自然分娩がいい、
無痛分娩がいい、
帝王切開がいい、
自宅で生みたい、助産院がいい、
総合病院で、

母の時にはそんなこと考えもしなかった、
と言っていた。

赤ちゃんが出来たかも?
そう思って最初にいく医院で
基本的には次の予約、検診してつぎの予約、
となっていくから、
ずーっとそこに行くようになるし最近は産院が少ないのか
どこで生むかは割と早く決めなくてはならないと言われる。

でも初めて親になる人間にとって
どんな風に出産するかイメージが湧くのは
安定期にはいり、お腹もだいぶん大きくなる辺りなんではないだろうか。

私の場合、理想をいえば助産師さんにみてもらい
自宅で産んでみたい、
という気持ちがこの頃強くなってきた。

ただ年齢的なことや初産であることが
なかなか理想にはまらなかったし、
そうなるべきことなら自然に流れる物事が
つっかかって先に進まないような停滞をみせていた。
そこで改めて色んなパターンを考える必要があり、
頭でっかちにならず友人から情報を集めはじめた。

また、産休にはいる時期や
産後の復活の時期をだいたいイメージして
この頃にはこんな風になっていたいな、
と理想をもっていた。

急激な体調不良になって
動けなくなる直前のこと、
妊娠六ヶ月のころのお話。

その9 6ヶ月 

日増しに胎動を感じることが多くなり、
お腹もだんだん大きくなってくると
お腹を撫でて話しかけることも多くなる。
どの服もどの服もお腹の辺りが擦れて
毛玉だらけになったりして
二人で笑った。

赤ちゃんは何もわからない、というのは
こちらの勝手な思い込みで
多分なんでもわかっているし
今の私たちなんかより
よほど尊い存在が宿っていると感じる。

私の感じるものがそのまま
伝わるのだ。そう思うと、
きれいな景色をみたり
感動したり
沢山の感情や情緒こそをシンクロさせたいと
思うようになった。

そんな気持ちでいると
日々何気なく過ごしてきた景色にも
新しい気持ちで向き合える。
仕事中もこんな風にみんなでお仕事してるんだよ、
出てきたら一緒にここに来ようね、
アシスタントさんもみな
ユパ様と会うのを楽しみにしてくれてるよ、
と伝えながら仕事をした。

その8 5ヶ月 

初めて胎動を感じたときのこと、
忘れたくないなって思う。

本当に微かにぽこっとお腹を内側から蹴るような感覚、
生まれて初めての感覚。

あれっ今のがそうかな…?
そうかな?!もう一回ぜひ!!
アンコール!!アンコール!!

自分のなかの命を感じる瞬間。

5ヶ月にはいると途端につわりが無くなり、
あんなに辛かったのが嘘のように動けるようになった。

お腹もまだそんなに大きくないのでまるで妊娠前と変わらないような動きができる。
そうなってみてはじめて、
ああ、やはりあの動けない日々はサボってたのでなくて実際に動けなかったんだなと思うことができた。

お腹が大きくなる前に
どこかに旅行に行こう、ととまそんが言ってくれて
福岡にツアーがある時に同行し、由布院に足を伸ばすことになった。
飛行機大丈夫かな、と思ったけれど、お腹の中ではわりと大はしゃぎでぽこぽこと激しく動いていた。
福岡空港に着いた時そのことを
「すごく喜んでた」とメンバーに報告したら
「彩子さん、それは普通に考えて怖かったんじゃないですか」と笑われた。
そうか怖かったのか。

なんでもいいほうに解釈してごめんね
これからもそんなかもだけど。

その7 5ヶ月 

自分は体力があるほうだと思っていたし、
実際年に一度も風邪を引かないくらい。

妊婦の身体は免疫力が落ちるから体調を崩しやすい、
とは聞いていたものの、こんなにも簡単に
「ちょっとした不調」
になるとは思わなかった。

すぐに風邪っぽくなる。
疲れが出やすく思うように動けない。

でもよく考えてみると、
この身体はいま全力をあげて
創ることに集中している。
要するに全て攻撃にでていて
こちらサイドはNOディフェンス、ゴールガラガラである。

赤ちゃんからしてみたら
そっちはお前がなんとかしろ、
ってとこだろうなとおもう。

この頃の赤ちゃんはまだ十数センチで、
お腹の中を自由に動き回りながら
大切な器官を作っているという。
多分母体に動き回られると繊細な作業(脳や内臓や血管や神経など)を創るとき都合が悪いのだろう、
案外そんなことがつわりの原因なんだろうとおもっている。

体調が悪いとき
とまそんがご飯を作ってくれたり
仕事場に迎えにきてくれたり
今は休んでいいんだ、ということを伝えてくれるのはとてもありがたいことだった。
自分ではやはりどこかで
サボってるのではないか、
言い訳にしているのではないか、
と思うときもあったから。

アシスタントにきて下さってる皆さんも
私の負担が軽くなるように積極的に動いてくれて
随分と助けてもらえたし、
皆と話しながら仕事をすることは
私の楽しみだった。

その6 4ヶ月 

つわりについてもう少し

赤ちゃんがくると、
身体のつくりがごっそり変わる。

体質やら感覚やら骨格やら、
ありとあらゆるものが
変わってくる。

匂いに敏感になる
ナーバスになる
食べ物が偏食になる

などなど。
私の場合、真夏につわりだったのもあり、自分の匂いがたまらなくダメで一日に何回もシャワーを浴びていた。
完全なる自家中毒。
パートナーの匂いがだめになる、という話もよく聞く。

そしてつわりには確かに個人差があるけれど、
夫となる人は決して妻に
うちは軽くてよかったね、などとは言ってはいけないそうです。
この時期の妊婦さんは豆腐メンタルで皆それぞれに抱え込んでいるから型にはめたり、
他と比べたりせず向き合うしかないのだから。

この時期はまだ胎動を感じないのでなかなかお腹に命がいるという実感が湧きにくい。
そして安定期でもないので
つわりを辛い、キツイと思うと同時に、へんに楽なのも本当に無事に育っているのかとよく不安になった。
もし自宅にエコーがあったら日に何度でもお腹の中を確認したくなっただろうと思う。

その5 4ヶ月 

つわりについて

つわりがなぜおきるのか、
ホルモンの影響とか
異質なものを身体が排除しようとしてるとか
色んな諸説があると思うけれど結局は誰にも答えはだせないのだとおもう。

出産するまで続く人も、全くない人もいる。
食べると吐く、食べないと吐く、
こればかり食べたい、食べ物の種類は問わない、など人の意見も特には参考にならない。
人参嫌いのひとが
つわり中人参しか受け付けなかった、とか
珈琲豆がとにかく食べたくて
お店で焙煎中に落ちてる豆を拾い食いした(!)とか
逸話を伺うのが楽しみだったり。

私の場合はいわゆる食べづわり、というタイプでお腹が空くと気持ち悪くなる。
全体的に怠くてずっと乗り物酔いしてる感じ。
肉と甘いものを求めなくなって、
とにかく野菜、あとはポテトが食べたい時期、ラーメンが食べたい時期などがあった。
抗い難い眠気もよくあり、どこだろうが寝られる。
でも一度も吐くことはなかった。

その間、とまそんのつわりは相変わらず続いていた。
急に吐く、やたら眠い、気持ち悪い。

この時二人で

二人で調子悪くなるなんて迷惑、と考えるより、分担してるからこの程度で済んでるんだありがたい

と考えよう、と話したりした。

あと二週間位で嘘みたいになくなる人が多いんだって、あと少しの辛抱だよ、
と夫を励ます妊婦妊娠四ヶ月ころのこと。

その4 4ヶ月 

男の子?女の子?
または
どっちがいい?

これは初期からよく聞かれる質問で、
多分今朝はいい天気ですね、のような
妊婦に対するご挨拶の定型文なのだと思う。

これに関しては

本っ当に どちらでもいい

というのが
赤ちゃんがきてからの実感。
健康であれば。
無事に生まれてくれれば。
もう望むものなんて
それ以外に何ひとつない。
心の底からそう思う。

これから親となる人にとって、
あらゆるリスクは
恐るるべきものだろうと思う。
私自身もハイリスクと言われる
高齢出産だから
何度もそのことは考えた。
今までは頭で考えていた
そのことですら、
当事者となって何ヶ月も共に過ごしてくると

来てくれたことに意味がある

と思えてくるから不思議。
これは自分が母にならないと
一生わからなかったことだったろうと思う。

その3 4ヶ月 

そのことをふと考えると
いちばんしっくりくるのは

ものすごく効率がいい。

ということだった。
もし私が赤ちゃんをこの手で作るならそれしか手に付かない程大変な作業なはずだから。

「赤ちゃんはお母さんが作っている」

のだと思っていたけれど実際自分で体感してみると

「ある人格が降りてきて、私の体の全てを使いながら
自分自身をつくっておられる」という感覚。

ユパさまはものすごい大作を作っている。
昼間にとてつもなく眠かったり
悪阻がひどいときなどは、

ああ、私が昨日夜更かししたから
夜の間に集中して進める予定だったのがずれこんだのかもな

と思って
たとえ仕事中でも
私の状況をよくわかってくれているアシスタントさんたちが
作品の裏をシャカシャカ擦る音を気持ちよく聞きながら
ウトウト一時間でも眠るようにしていた。

その2 3ヶ月 

「中の人」

お腹の中に赤ちゃんがやって来たとき、
その人に名前をつけるのは
意外と知られてないのか、驚かれることも多い。
でも妊婦さんに何て呼んでるの?
と聞くと大抵、
名前をつけて普段から話しかけている。

友達の次男は「ルーキー」
そのうちでは新入りは毎回同じ名前で呼ぶらしい。
なんか格好いい。

また別の友人は「ハチ」
どうして?と聞いたらはにかみながら、
初めて心臓が確認できたとき先生が、
ほらこのハチハチしてるのが心臓ですよ、
といってね、
それが本当にハチハチってして見えて感動したから

といっていて、私はこのエピソードがとても好きになった。

ハチハチと瞬く命に感激した彼女
が目に浮かぶから。

で、うちの場合は
「ユパ」
お腹に入ってきた当初は
まだとても神聖な存在で
光のような、人ではない何か、
という雰囲気だったので
自然とユパ様ユパ様、
と呼んでいた。

毎日の様に
何ヶ月も名前を呼んでいるうちに
この名前に愛着が湧いてしまう。
でも生まれてきた人に
「ユパ」と名付けることはないだろう、と
(今のところ)思っている。

その1 2ヶ月 

私たちのところにその存在がやってきたとき、
いち早く気づいたのは母親である私ではなく、
夫のとまそんだった。

本屋へ行けば
出産や子育ての本ばかりに目がいく、
と言っていたり

食事中にガタンと勢いよく立ち上がり
口を抑えてトイレにかけこんだり (とまそんが)

やたらと葡萄ばかり貪り食べていたりした。
(とまそんが)

私はというと、
そんな様子を見ていて内心
とまそんがこんな風なら
赤ちゃんが来てくれているのかも、
と思っていた。

まだその存在が確認できていないときのお話。

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登場人物
「私」

鎌倉在住の陶芸作家
初めての妊娠出産育児に新しい発見と面白みを見出す
家族とアシスタントさんに支えられながら育児と作陶を両立中 夫、義母、娘と四人暮らし


花紅(かこ)さん

2014年4月林家に誕生した女の子
心身共に健やかな人


ユパ様

腹の中にいたときの花紅さんの呼名


 
とまそん

夫 ミュージシャン
SheHerHerHersのベーシスト
鎌倉では「小川コータ&とまそん」としても活動中
嫁の仕事の影の立役者
哲学者のような深い洞察力で子育てを楽しむ


みっこさん

同居するお義母さん 野口整体指導者として毎日忙しく飛び回るが家ではキュートなお母さん兼、ばあば
「私」の憧れの女性


アシスタントさん

「私」のアトリエAt Home Worksに来てくれるアシスタントさん達
皆が積極的に子育てにも協力
アトリエではミルク、オムツ、寝かしつけ、作陶となんでもこなす。
チームAt Home Worksとして見事な連携プレーをみせる

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